漫画「ハンザスカイ」に思う:新しくなくていい、陳腐でなければいい
あ、気がついたら2012年になって初めてのエントリーですね。
遅くなり過ぎましたが、あけましておめでとうございます。
このブログもだらだらと6年目に突入しました。
相変わらずひと月に一度あるかないかの更新ペースですが、どうか引き続きお気楽にお付き合い頂ければ幸いでございます。
さて不肖ヤマグチ(ハンドルネームは変えてもこの書き出しは引き続き使います)、相変わらず活字からは遠ざかり気味の日々でございまして、買って読むのは漫画が多いです。
主にチェックするのは週刊少年ジャンプと週刊モーニングが軸なのは変わらないんですが、最近はここに週刊少年チャンピオン(以下チャンピオン)が加わっています。
今のチャンピオン。「ドカベン・スーパースターズ編」と「刃牙」は別格として、色々連載はありますが、正直ジャンプあたりに比べるとイマイチマイナーな印象は否めません。だからこそのチャンピオンなのかも知れませんが。
とはいえワシがチェックし始めたのは、とある漫画との出会いがあったからです。
それが、今回ご紹介する佐渡川準先生の「ハンザスカイ」です。
相変わらず仰々しい書き出しになっているのは承知しておりますが、この漫画に何故自分が惹かれるんだろう? と考えた時に、漫画に限らない、色々面白い示唆が見えて来た感じがしたんですよね。それを頑張って書いてみたいと思います。
サブコピーに「高校空手道部血風録」とある通り、内容は高校の空手漫画で、そんなに目新しい題材ではありません。「空手バカ一代」をはじめとして、空手を題材にした漫画は今までだって少なからずありました。
にも関わらず、ワシがこの漫画に強く惹かれた理由を自分で分析してみますと、所謂少年誌で掲載される漫画で抑えておかなければならないポイントからズレてはいないのに、「バトルに勝つ」ことだけを重要視せず、「勝負の前」そして「勝負の後」についてまで、実に丁寧に描いているからだと思うのです。
象徴的だと思う下りをご紹介しましょうか。(ネタバレごめんなさい)
主人公・半座龍之介(はんざ・りゅうのすけ)のいる千葉県立御門(みかど)高等学校の空手道部は、高校空手道部インターハイの県内予選で東嶺大(とうれいだい)市川高校と対戦します。
所謂「白帯」のままの半座は先鋒として出場。対戦相手の先鋒である結城凛(ゆうき・りん)は、半座と同じ中学の出身。その時から結城は空手を習っていて、自分の腕に絶対の自信を持っていましたが、当時「喧嘩屋」だった半座に、結局恐れをなして戦いを挑むことはありませんでした。
しかしもっと強くなっていつか半座を見返してやる! そう思って修練を積んで高校のインターハイに出場すると、何と「空手の対戦相手」として半座が現れたのを見て、怒りのあまり血相を変えます。弱かった自分が強くなれると思っていた場所に、よりにもよって「喧嘩屋」の半座が土足で割り込んで来た、と感じたのです。
「黒帯」である結城は、試合において半座を圧倒します。しかしあくまでも「空手」で、諦めず真直ぐに挑んで来る半座の姿に、次第に苛立ち、自分を見失って行きます。そして終了間際の間際で、結城は反則技を使ってしまい、今まで積み重ねて来たポイントを全て失って、試合に敗れてしまうのです。
この展開だけでも一筋縄ではいかない作品だなぁと思ったのですが、更に特筆すべきは、この後の両者の描かれ方です。
半座は試合には勝ったものの、内容がどうだったかは当然分かっていますから、
「ごめん…俺、負けてた」
と、うめいたのでした。
結城は、半座は既に喧嘩屋ではなく「空手選手」になっていたのだと初めて気付き、大将の真鍋にも諭され、深く反省するのでした。
そして対戦が終わり、両校が挨拶をする時に、結城は握手をするかどうかためらいます。
が、先に手を差し伸べて来たのは半座でした。
「次に戦う時は、もうちょっと俺もマシになってるからよ」
そう笑顔で話す半座の姿に、結城も更なる精進を誓うのです。
この漫画は徹頭徹尾こうした描かれ方なのです。バトルシーンは勿論のこと、勝負に勝った後どう行動するか、負けた後どう行動するか、そこまで踏み込んで描いているのです。
勿論主人公の半座以外にも、半座を厳しく導くヒロイン・藤木穂波(ふじき・ほなみ)、空手道部の部長であり長い足を活かした多彩な足技から「巨塔(バベル)」の異名を持つ青柳栄治(あおやぎ・えいじ)、当初部員から敬遠されていた半座の最初の理解者である番場誠十郎(ばんば・せいじゅうろう)、メキメキ成長していく半座を羨ましく思い「自分は野良犬」と自覚しつつも「試合に勝ちたい」と奮闘する野田(のだ)ケン太、無口でマイペースだが負けん気が強く謎掛けを試合中に唱えるのがお約束の財前隼人(ざいぜん・はやと)などなど、個性的な部員ばかりです。
対戦相手の高校にも、私立蓮城(れんじょう)高等学校には、半座の良きライバルである峰岸勝朗(みねぎし・かつろう)や、青柳のライバルであり「殺人蜂(キラービー)」の異名を持つ伊奈光(いな・ひかる)などがいますし、要陵(ようりょう)学園には、個人組手王者であり絶対的強さを誇る吹越竜之助(ふきこし・りゅうのすけ)、財前とかつて同門だった能登良雅(のと・りょうが)、主将であり柔軟な膝関節を駆使した予想外な軌道の足技を持つ徳良圭太(とくら・けいた)などがいます。
もう枚挙に暇がないくらい、魅力的なキャラクターばかりです。正直作画的に著しく「上手い」と思える絵ではありませんが(佐渡川先生申し訳ありません)、それを補って余りあるぐらいに、線に「力」、そして「勢い」があるのです。
佐渡川先生といえば、最初はバトル&ギャグの「無敵看板娘」で世に出、その後野心作として「PUNISHER(パニッシャー)」を連載しましたが、単行本7巻で所謂「打ち切り」になってしまった模様です。それでも、再度こうした作品で巻き返して来られたということは、やはり力のある漫画家先生だったということでしょう。(外野のゲスい勘繰りですが)「打ち切り」で忸怩たる思いも当然あったと思いますが、作品で受けた借りは作品で返すという姿は、正にプロフェッショナルですよね。
この「ハンザスカイ」を読み進めていてつくづく思うのは、漫画に限らず何でもそうですが、「良いもの」というのは「新しいもの」でなければならない訳ではないということなんですね。
勿論「新しいもの」は人々の耳目を集めやすいです。けれど、新しくない題材でも、冴えているやり方で取り扱えば「良いもの」になれる可能性は充分あるのです。
小説でも、音楽でも、絵でも、何でもそうです。
新しくなくていいんです。陳腐でなければいいんです。
「ハンザスカイ」は正にそれを地で行って、成功した作品だと言えるのではないでしょうか。だからこそ、高校卒業して随分経つおっさんであるワシの心をここまで揺さぶる作品になっていると思うんですよね。
さてまだまだ連載は続行中な訳ですが、出来ればその、藤木の友人で地味にかわいい大谷瑞希(おおたに・みずき)ちゃんが試合に勝つ所を、見たいんですけどね…って、今まで書いて来たことが台無しですね。
しょせんぼくはこんなもの。
遅くなり過ぎましたが、あけましておめでとうございます。
このブログもだらだらと6年目に突入しました。
相変わらずひと月に一度あるかないかの更新ペースですが、どうか引き続きお気楽にお付き合い頂ければ幸いでございます。
さて不肖ヤマグチ(ハンドルネームは変えてもこの書き出しは引き続き使います)、相変わらず活字からは遠ざかり気味の日々でございまして、買って読むのは漫画が多いです。
主にチェックするのは週刊少年ジャンプと週刊モーニングが軸なのは変わらないんですが、最近はここに週刊少年チャンピオン(以下チャンピオン)が加わっています。
今のチャンピオン。「ドカベン・スーパースターズ編」と「刃牙」は別格として、色々連載はありますが、正直ジャンプあたりに比べるとイマイチマイナーな印象は否めません。だからこそのチャンピオンなのかも知れませんが。
とはいえワシがチェックし始めたのは、とある漫画との出会いがあったからです。
それが、今回ご紹介する佐渡川準先生の「ハンザスカイ」です。
相変わらず仰々しい書き出しになっているのは承知しておりますが、この漫画に何故自分が惹かれるんだろう? と考えた時に、漫画に限らない、色々面白い示唆が見えて来た感じがしたんですよね。それを頑張って書いてみたいと思います。
サブコピーに「高校空手道部血風録」とある通り、内容は高校の空手漫画で、そんなに目新しい題材ではありません。「空手バカ一代」をはじめとして、空手を題材にした漫画は今までだって少なからずありました。
にも関わらず、ワシがこの漫画に強く惹かれた理由を自分で分析してみますと、所謂少年誌で掲載される漫画で抑えておかなければならないポイントからズレてはいないのに、「バトルに勝つ」ことだけを重要視せず、「勝負の前」そして「勝負の後」についてまで、実に丁寧に描いているからだと思うのです。
象徴的だと思う下りをご紹介しましょうか。(ネタバレごめんなさい)
主人公・半座龍之介(はんざ・りゅうのすけ)のいる千葉県立御門(みかど)高等学校の空手道部は、高校空手道部インターハイの県内予選で東嶺大(とうれいだい)市川高校と対戦します。
所謂「白帯」のままの半座は先鋒として出場。対戦相手の先鋒である結城凛(ゆうき・りん)は、半座と同じ中学の出身。その時から結城は空手を習っていて、自分の腕に絶対の自信を持っていましたが、当時「喧嘩屋」だった半座に、結局恐れをなして戦いを挑むことはありませんでした。
しかしもっと強くなっていつか半座を見返してやる! そう思って修練を積んで高校のインターハイに出場すると、何と「空手の対戦相手」として半座が現れたのを見て、怒りのあまり血相を変えます。弱かった自分が強くなれると思っていた場所に、よりにもよって「喧嘩屋」の半座が土足で割り込んで来た、と感じたのです。
「黒帯」である結城は、試合において半座を圧倒します。しかしあくまでも「空手」で、諦めず真直ぐに挑んで来る半座の姿に、次第に苛立ち、自分を見失って行きます。そして終了間際の間際で、結城は反則技を使ってしまい、今まで積み重ねて来たポイントを全て失って、試合に敗れてしまうのです。
この展開だけでも一筋縄ではいかない作品だなぁと思ったのですが、更に特筆すべきは、この後の両者の描かれ方です。
半座は試合には勝ったものの、内容がどうだったかは当然分かっていますから、
「ごめん…俺、負けてた」
と、うめいたのでした。
結城は、半座は既に喧嘩屋ではなく「空手選手」になっていたのだと初めて気付き、大将の真鍋にも諭され、深く反省するのでした。
そして対戦が終わり、両校が挨拶をする時に、結城は握手をするかどうかためらいます。
が、先に手を差し伸べて来たのは半座でした。
「次に戦う時は、もうちょっと俺もマシになってるからよ」
そう笑顔で話す半座の姿に、結城も更なる精進を誓うのです。
この漫画は徹頭徹尾こうした描かれ方なのです。バトルシーンは勿論のこと、勝負に勝った後どう行動するか、負けた後どう行動するか、そこまで踏み込んで描いているのです。
勿論主人公の半座以外にも、半座を厳しく導くヒロイン・藤木穂波(ふじき・ほなみ)、空手道部の部長であり長い足を活かした多彩な足技から「巨塔(バベル)」の異名を持つ青柳栄治(あおやぎ・えいじ)、当初部員から敬遠されていた半座の最初の理解者である番場誠十郎(ばんば・せいじゅうろう)、メキメキ成長していく半座を羨ましく思い「自分は野良犬」と自覚しつつも「試合に勝ちたい」と奮闘する野田(のだ)ケン太、無口でマイペースだが負けん気が強く謎掛けを試合中に唱えるのがお約束の財前隼人(ざいぜん・はやと)などなど、個性的な部員ばかりです。
対戦相手の高校にも、私立蓮城(れんじょう)高等学校には、半座の良きライバルである峰岸勝朗(みねぎし・かつろう)や、青柳のライバルであり「殺人蜂(キラービー)」の異名を持つ伊奈光(いな・ひかる)などがいますし、要陵(ようりょう)学園には、個人組手王者であり絶対的強さを誇る吹越竜之助(ふきこし・りゅうのすけ)、財前とかつて同門だった能登良雅(のと・りょうが)、主将であり柔軟な膝関節を駆使した予想外な軌道の足技を持つ徳良圭太(とくら・けいた)などがいます。
もう枚挙に暇がないくらい、魅力的なキャラクターばかりです。正直作画的に著しく「上手い」と思える絵ではありませんが(佐渡川先生申し訳ありません)、それを補って余りあるぐらいに、線に「力」、そして「勢い」があるのです。
佐渡川先生といえば、最初はバトル&ギャグの「無敵看板娘」で世に出、その後野心作として「PUNISHER(パニッシャー)」を連載しましたが、単行本7巻で所謂「打ち切り」になってしまった模様です。それでも、再度こうした作品で巻き返して来られたということは、やはり力のある漫画家先生だったということでしょう。(外野のゲスい勘繰りですが)「打ち切り」で忸怩たる思いも当然あったと思いますが、作品で受けた借りは作品で返すという姿は、正にプロフェッショナルですよね。
この「ハンザスカイ」を読み進めていてつくづく思うのは、漫画に限らず何でもそうですが、「良いもの」というのは「新しいもの」でなければならない訳ではないということなんですね。
勿論「新しいもの」は人々の耳目を集めやすいです。けれど、新しくない題材でも、冴えているやり方で取り扱えば「良いもの」になれる可能性は充分あるのです。
小説でも、音楽でも、絵でも、何でもそうです。
新しくなくていいんです。陳腐でなければいいんです。
「ハンザスカイ」は正にそれを地で行って、成功した作品だと言えるのではないでしょうか。だからこそ、高校卒業して随分経つおっさんであるワシの心をここまで揺さぶる作品になっていると思うんですよね。
さてまだまだ連載は続行中な訳ですが、出来ればその、藤木の友人で地味にかわいい大谷瑞希(おおたに・みずき)ちゃんが試合に勝つ所を、見たいんですけどね…って、今まで書いて来たことが台無しですね。
しょせんぼくはこんなもの。
JUGEMテーマ:漫画/アニメ
- 2012.02.16 Thursday
- 本
- 19:00
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- by からふね



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